コンサート会場でオーケストラの音楽を聴く時に、どこの席に座ったらいいか迷うことはありませんか?観客席はとても広いので、1階席か2階席か、前方なのか後方なのか、どう決めたらいいか判断がむずかしいですよね。私は今までいろいろな席で演奏を聴いてきて、席によって見える景色や聴こえる音が全く違うことに驚きました。コンサート会場で聴く音楽をどう楽しみたいかによって、選ぶべき席は変わってきます。
今回はオーケストラを聴くのにおすすめの席と、目的別による席の選び方をご紹介します。コンサートホールで好みの席を選んで、生の演奏が聴ける貴重な時間を満喫してください。
オーケストラのコンサートではこの席を選ぼう
1階席の中央寄り
前から10列目あたりの1階席の中央寄りの席は、オーケストラの音がバランスよく聴こえてステージ全体も見渡せるのでおすすめです。演奏者を身近に感じられ、視覚的に楽しむのにいい位置です。
「いい席」となると一番前のような気がしますが、最前列はステージよりも目線が低く、演奏者を見るためには顔を上げていなければならないので、首や頭が痛くなってしまうことがあります。また、指揮者や弦楽器奏者は近くで見えますが後ろにいる管楽器奏者はよく見えません。全体の音のバランスも偏りが出てしまうので、最前列ではなく、中央付近を選んでください。
ステージの高さよりも上の位置になる1階席中央寄りの席で演奏を聴いたほうが音のバランスが良く、体に負担がかからずに音楽を楽しめます。注意していただきたいのは1階席後方の、2階席の下にもぐりこんでしまう「屋根かぶり」と呼ばれる席です。最前列と同じように、屋根かぶりの席も音が届きにくく音響がよくないので、1階席に座る時には2階席の下の位置になっていないか確認が必要です。
2階席の最前列中央
もう1つのおすすめは、音質がいい2階席の最前列中央の席です。音は上へ上へと飛んで伝わっていくので1階席よりも音響がすぐれているホールが多く、バランスよく響いた音が楽しめます。生のオーケストラの心地いい響きを存分に楽しみたい方には特におすすめしたいです。最前列中央の席は前に座る人の頭で視界がさえぎられることがなく、首を振らなくてもステージ全体が見渡せます。視覚的なストレスがなく音楽が聴けるのはうれしいですね。皇室の方々が鑑賞される時もこの席にいらっしゃることがほとんどです。1階席よりもチケット代が安い場合もあるので、お得な席かもしれません。
目的別による席の選び方
演奏者を間近で見たい時は1階前方の席
1階前方の席では演奏者を間近で見られるのはもちろん、オーケストラの音の迫力と臨場感をたっぷりと味わえます。ステージ前方にお目当ての演奏者がいる場合は、1階前方の席が近くてよく見えるのでおすすめです。この席は指揮者の動きもよく見えますし、演奏者の表情や指の動き、息づかいまでわかるほどの近さです。CDなどで音楽を聴く時には決して味わえない、コンサート会場で聴くからこそ味わえる臨場感ですね。自分も楽団の一員になったような気分になれます。
オーケストラの約80名もの演奏者が奏でる音を近くで聴けるので、その圧倒的な迫力も体感できます。ステージ前列の楽器の、反響しない「生の音」を聴けるのもこの席の特徴です。演奏者に花束を渡したり握手もできるかもしれないので、交流を楽しみながら演奏者を一番身近に感じられる席ですね。
指揮者を正面から見たい時はバックステージ席
指揮者を正面からよく見たい時には、ステージの後ろ側に設置されているバックステージ席が最適です。観客が普段座る席とは正反対の位置になるので、見える景色も真逆になります。自分が演奏者になった気持ちで指揮者を見たり、ホールを見渡せるというおもしろさがあります。いつもは観客に背を向けている指揮者ですが、どんな表情をしているのか、指揮の身振り手振りの動きも気になりますよね。バックステージ席では指揮者を正面から見られるので、指揮者と演奏者の細かい動きもよくわかります。
ただし、この席は音響があまりよくありません。オーケストラの最後尾列の打楽器や金管楽器は席から近いのでよく聴こえますが、弦楽器の音はあとから聴こえてくることになり、音のバランスが偏ってしまいます。演奏者が聴く音響と近いものを聴けるのですが、CDで聴く音とは大きく異なるため、バックステージ席はチケット代が安くなっています。ホールによってはバックステージ席がないところもありますが、お気に入りの指揮者の演奏会の時は指揮者が正面から見えるバックステージ席を取ってみるのもいいですね。人気の指揮者が出演する演奏会では、この席が早く売り切れてしまうそうです。
オーケストラの全貌を見たい時は最上階前方の席
オーケストラの全貌を見たい時には最上階前方の席を選んでください。多い時には100人ほどの演奏者を見渡すためには、高いところからのほうが見やすいです。いろいろな楽器が次々にメロディをうけついでいくことがよくありますが、その様子も最上階から見るとよくわかっておもしろいですよ。知り合いが管楽器奏者や打楽器奏者の場合も、高い位置からくまなく探したほうが見つけやすいです。
また、音響の良さも最上階の席の魅力です。いいコンサートホールはステージで奏でられる音が上に広がっていくようにつくられています。すべての楽器の音がブレンドされた、オーケストラの音の響きをたっぷりと味わえる席です。最上階なので演奏者からの距離がとても遠くなってしまいますが、音楽全体のハーモニーを楽しむためにこの席を選ぶのもいいですね。演奏者をよく見たい時にはオペラグラスや双眼鏡を使うことをおすすめします。
最前列のメリットとデメリット
ステージから近い最前列の席がいいのではないかと選んでしまいそうですが、この席に座る前に知っておいてほしいデメリットもあります。ここからは最前列の席のメリットとデメリットをお伝えします。
最前列のメリット
最前列はやはり演奏者を一番近くで見ることができるのがいいですね。コンサート会場で音楽を聴く観客にとって、演奏者を見て楽しむという視覚的な要素もとても重要です。演奏者の表情や細かい動き、仕草がよく見えます。自分の座る席に近い演奏者がよく見えるので、プロの仕事現場を近くで見させてもらっている気持ちになります。
指揮者の横に立って演奏するソリストがいる場合も、指揮者とソリストのやりとりや、ソリストの指の動きや息づかいも感じながら音楽が聴けます。演奏者も最前列に座っている観客の顔がよく見えるのでお互いに目が合うこともあり、演奏者との交流を楽しめるのも席が近いからこそです。自分があたかもオーケストラの一員になったような気分になり、一緒に笑ったり緊張したりして演奏者を近くに感じられる席です。
最前列のデメリット
最前列の席ではステージを常に見上げることになるため、演奏途中で首や頭が痛くなることがあります。ステージ全体を見るにも首を動かす必要があり、肉体的にきついことがデメリットとしてあげられます。演奏会は長時間にわたることもあるので、心配な方は最前列付近の席は避けて、ステージと同じ目線かそれより高い位置で見られる席がおすすめです。
また、最前列の席ではオーケストラ全体を見るという楽しみはなくなります。ステージの後ろのほうの管楽器がよく見えないので、弦楽器の隙間から見ることになります。管楽器奏者がとても見えにくく音も聴こえにくい席です。オーケストラ全体の音に関してもバランスがわるく、反響した音が届きにくいです。弦楽器の音は直接聴こえて、オーケストラ全体の音は頭の上を通過してしまうため、音のバランスに偏りが出てしまいます。
まとめ
席によってステージの見え方や音響が大きく変わるので、自分にとって一番心地よく音楽が聴ける席を見つけてください。何を重視して席を選ぶか、人によって好みがまったく違ってきて奥が深いですね。ホールによる特性もあるので、同じホールに何度も通う機会があれば席をいろいろ変えてみて、お気に入りの場所を探すのもおもしろいです。自分にぴったりの席を見つけて、壮大なオーケストラの生演奏を楽しんでください。
【この記事を書いた人】
オーケストラ好きライター さち
「愛知県在住のWebライター。学生時代は吹奏楽部に所属し、7年間ホルンを演奏していました。現在、双子を育児中です。 心が洗われて優雅な気持ちになる、オーケストラの音楽の魅力を伝えたいです。」
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