繊細さと狂気が共存する独自の世界観で、音楽のみならずアート全般に多大な影響を与えるアーティスト「米津玄師」。代表曲「Lemon」をはじめ、「アイネクライネ」「感電」など数々のヒット作を生み出し、その詩的な言語感覚と映像的なサウンドメイクで、幅広い世代から支持を集めています。初音ミクなどボカロ文化のルーツを持ちながら、ロック、ポップス、ヒップホップ、さらには現代美術に至るまで、ジャンルを軽やかに越境するその創作姿勢は唯一無二。自身が手がけるジャケットアートやMVの演出にもその美意識は宿り、音楽にとどまらない表現者としての存在感を放っています。内向的であるがゆえに強烈な個を放つ米津玄師は、まさに現代の感性を映し出す“鏡”として、新しい音楽の地平を切り拓いています。
この記事では、米津玄師の人気曲を10個に絞って紹介します。編集部がおすすめする楽曲も併せて紹介しますので、米津玄師に興味がある方はぜひ参考にしてください！
米津玄師の人気曲10選
唯一無二の音楽性とビジュアル表現で音楽シーンを牽引しているアーティスト「米津玄師」。彼の音楽は、心の奥に潜む痛みや孤独、そしてそこに差し込む一筋の希望を、詩的かつ映像的な言葉とメロディで描き出し、聴く者の深層に静かに、そして確かに触れます。繊細でありながら芯のある歌声は、感情を削り出すように響きわたり、音楽という枠を超えて、ひとつの“物語”として人々の記憶に刻まれていきます。
ライブでは、自らの世界観を視覚的にも徹底的に表現し、楽曲ごとに異なる映像演出や舞台美術が、音と視覚の融合を実現。アートディレクション、アニメーション、パフォーマンスに至るまで、細部にまで意識が行き届いたステージは、観客を“米津玄師の内面”へと誘う没入体験そのものです。楽曲を通じて自らの痛みや問いをさらけ出しながらも、聴き手それぞれの物語を重ねる余白を残す——その誠実で静かな表現姿勢が、幅広い世代に共感を呼び続けています。
【プロフィール】
・1991年生まれ、徳島県出身のシンガーソングライター・イラストレーター
・繊細な詩世界とジャンルを越えた音楽性、そして自ら手がけるアートワークが特徴
・音楽活動のほか、映像制作・イラスト・プロデュース業にも積極的に取り組む
【活動歴】
・2012年、ボカロP「ハチ」としての活動を経て、米津玄師名義でソロ活動を開始
・2018年、「Lemon」が大ヒットし、2年連続で年間チャート1位を獲得
・同年にNHK紅白歌合戦に初出場、以降も国内外で高い評価を獲得し続けている
・以降「馬と鹿」「感電」「KICK BACK」など、ドラマやアニメ主題歌を多数手がける
※参考サイト
・Apple Music
・Spotify
・YouTube Music
・JOYSOUND
1. Lemon
「Lemon」は、2018年にリリースされた米津玄師の代表曲であり、その名を広く一般に知らしめる転機となった一曲です。深い喪失感を描いた歌詞と、美しくも切ないメロディが多くのリスナーの心に寄り添い、国内外で異例のロングヒットを記録。TBSドラマ『アンナチュラル』の主題歌としても話題を集め、YouTubeではMVの再生回数が9億回を超えるなど、時代を象徴する楽曲として圧倒的な存在感を放っています。
冒頭から静かに響くギターのフレーズと、どこか儚げな米津の歌声が、楽曲全体に漂う「喪失」と「癒し」の空気を形づくります。〈今でもあなたはわたしの光〉というフレーズに象徴されるように、大切な人を失ったときのどうしようもない感情が、緻密な言葉と音で丁寧に紡がれており、聴く者それぞれの記憶や感情と深く結びついていきます。
「Lemon」は、米津玄師のソングライターとしての力量と、表現者としての奥行きを世に知らしめた傑作であり、J-POPに新たな美意識をもたらした象徴的な一曲です。時間が経っても色褪せないその輝きは、多くの人々の「人生の一曲」として、これからも語り継がれていくことでしょう。
2. KICK BACK
「KICK BACK」は、2022年にリリースされた米津玄師のシングルで、TVアニメ『チェンソーマン』のオープニングテーマとして制作された楽曲です。King Gnuの常田大希との共同アレンジによって生み出されたサウンドは、ロック、エレクトロ、昭和歌謡といった要素が入り混じる、まさに異形のポップソング。モーニング娘。の「そうだ! We’re ALIVE」のサンプリングを大胆に取り入れており、激しく歪んだビートとシャウトが一気にテンションを引き上げます。米津らしいひねりの効いたメロディと不条理な歌詞が織りなす世界観は、アニメの持つダークで荒唐無稽な魅力と見事にリンクしています。
歌詞では、現代社会の閉塞感や虚無感を痛烈に表現しながらも、どこかユーモラスなトーンを保っており、聴く者に複雑な感情を呼び起こします。楽曲全体に漂う“狂気”と“遊び心”の絶妙なバランスは、米津玄師の表現者としての幅広さと挑戦精神を象徴するもの。「KICK BACK」は、アニメ主題歌の枠を超えて、J-POPの可能性を広げる革新的な楽曲として、今もなお多くのファンを魅了し続けています。
3. ピースサイン
「ピースサイン」は、2017年にリリースされた米津玄師のシングルで、TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第2期のオープニングテーマとしても広く知られる楽曲です。疾走感あふれるバンドサウンドに乗せて、葛藤や不安を抱えながらも未来へ向かって歩き出す若者たちの姿を、米津ならではの感性で描いています。ストレートで力強い旋律と、どこか切なさを感じさせるアレンジが融合し、前向きでありながらも深みのあるエネルギーを放つ一曲です。
この楽曲では、単なるヒーロー像への憧れではなく、「それでも進む」という意志の強さに重きが置かれており、聴く者の内面にそっと火を灯すような力があります。アニメとの親和性も高く、作品のテーマと米津玄師の音楽性が見事に融合した結果、幅広い層から高い評価を受けました。
4. アイネクライネ
「アイネクライネ」は、2014年に配信限定でリリースされた米津玄師の代表的なバラード曲であり、彼の音楽キャリアの中でも特に多くの人々の心に深く残る一曲です。シンプルなアレンジと静かなメロディの中に、繊細な感情が丁寧に織り込まれており、初めて聴く人にも強い印象を残します。人と人とのつながりや、存在することの不確かさと温かさを見つめ直すような静謐な世界観は、リリースから時間が経った今も色あせることなく、多くのリスナーに寄り添い続けています。
この楽曲には、派手さや勢いではなく、日常に潜むささやかな感情のきらめきが込められており、米津玄師の持つ詩的な感性と内省的な視点が際立っています。ミュージックビデオもまた、彼自身が描いたアニメーションによって構成されており、音楽と映像が静かに呼応し合うことで、より深い没入感を生み出しています。
5. LOSER
「LOSER」は、2016年にリリースされた米津玄師のシングルで、力強いビートと鋭い言葉のリズムが印象的なアップテンポの楽曲です。ヒップホップやエレクトロの要素を取り入れたサウンドと、米津特有のメロディラインが融合し、エネルギッシュで中毒性のある一曲に仕上がっています。挑発的でありながらもどこかユーモラスな空気をまとったこの楽曲は、「敗者」というタイトルの裏側にある、しなやかで飾らない生き方を肯定するようなメッセージを感じさせます。
「LOSER」では、社会の規範や他人の目にとらわれず、自分自身のリズムで歩むことの大切さが表現されており、聴く人に自分らしさを貫く勇気を与えてくれます。楽曲の象徴ともいえるダンスパフォーマンスを取り入れたミュージックビデオも話題となり、音楽だけでなく視覚的な演出においても米津玄師の表現の幅広さが際立ちました。
6. 感電
「感電」は、2020年にリリースされた米津玄師の楽曲で、TBS系ドラマ『MIU404』の主題歌として書き下ろされた作品です。ファンクやロックの要素を取り入れたグルーヴ感あふれるサウンドに、米津独自のリズム感とメロディセンスが重なり、聴く者を一気に引き込むような高揚感を生み出しています。ダンサブルでありながらもどこか不穏さを感じさせる独特の空気感が、物語の持つスピード感やスリルと高い親和性を見せ、多くのリスナーの心に強烈な印象を残しました。
この楽曲では、秩序と混沌、理性と本能のはざまで揺れ動く人間の姿が、テンポの速いサウンドと鋭い言葉運びを通してダイナミックに描かれています。緻密に構築されたサウンドプロダクションと、米津のエモーショナルなボーカルが絶妙に噛み合い、聴けば聴くほど新たな発見があるような奥行きを持っています。
7. 灰色と青 (＋菅田将暉)
「灰色と青（＋菅田将暉）」は、2017年にリリースされた米津玄師の楽曲で、俳優でありアーティストとしても活動する菅田将暉をゲストボーカルに迎えたコラボレーション作品です。どこか懐かしさを感じさせるメロディと、感情の波を丁寧にすくい取ったような構成が特徴で、青春時代の記憶や、かつての自分との対話を描いたような深い余韻を残すバラードとなっています。ふたりの声が交錯することで、楽曲の持つストーリー性と感情の振れ幅がさらに際立ち、心の奥に静かに語りかけてくるような印象を与えます。
この楽曲では、過去と現在、希望と後悔が交差する繊細な心情が、ゆったりとしたテンポの中で丁寧に紡がれており、人生の節目や心の節々に響くような普遍的なテーマが描かれています。ミュージックビデオには米津自身が出演し、朧げな風景の中で時間の流れや人との別れが象徴的に表現され、音楽と映像の両面で作品世界を深めています。
8. さよーならまたいつか!
「さよーならまたいつか!」は、2024年にリリースされた米津玄師の楽曲で、NHK連続テレビ小説『虎に翼』の主題歌として書き下ろされました。明るさと切なさが同居する柔らかなメロディと、軽やかでありながらも奥深いアレンジが特徴のこの楽曲は、日々の暮らしの中で出会いと別れを繰り返す人々の心に、そっと寄り添うような温かさを持っています。米津特有のノスタルジックな音作りと、自然体のボーカルが重なり、聴き手に穏やかな余韻を残す一曲です。
この楽曲では、「別れ」をネガティブにとらえるのではなく、人生の流れの中にあるごく自然な出来事として捉え、それをやさしく肯定していくようなまなざしが感じられます。ドラマの世界観と見事に調和し、物語の節目ごとに流れるたびに、視聴者の感情を静かに揺さぶりました。
9. Plazma
「Plazma」は、2025年にリリースされた米津玄師の楽曲で、テレビアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の主題歌に起用されました。緻密に組み立てられたビートと浮遊感のあるメロディが融合し、聴く者を未知の世界へと誘います。米津の繊細でありながら力強いボーカルが、楽曲の持つ未来的かつミステリアスな空気感をさらに際立たせ、従来のJ-POPの枠組みを超えた新しい表現を感じさせます。
この曲は、内面の揺れ動きや不確かさを映し出しながらも、静かに前進していく意思を感じさせる作品です。多層的なサウンドデザインとエモーショナルな歌声が絶妙に重なり合い、何度も聴き返すほどに新たな発見と深みを与えてくれます。
10. BOW AND ARROW
「BOW AND ARROW」は、2025年にリリースされた米津玄師の楽曲で、テレビアニメ『メダリスト』の主題歌に起用されました。攻撃的でありながらも洗練されたギターリフとドラムのリズムが曲全体を引き締め、米津の独特なボーカルが鋭く感情を乗せて響きます。楽曲のタイトルが示すように、まるで弓矢を放つかのような強い意志と決意が感じられ、そのエネルギーが聴く者に鮮烈な印象を与えます。
歌詞の世界観は、挑戦や自己の葛藤をテーマにしており、不安や迷いを抱えつつも前へ進もうとする姿勢が力強く表現されています。音の一つひとつが精緻に計算されていることで、緊張感と高揚感が絶妙に交錯し、まるで一つの物語を体験しているかのような没入感を生み出しています。
米津玄師の編集部おすすめ曲3選
米津玄師の人気曲を10個に絞って紹介しました。ここでは、惜しくもTOP10に入らなかった曲の中から、生粋のアーティストファンが多い編集部がおすすめする楽曲を3曲紹介します。
1. 春雷
「春雷」は、2017年にリリースされた米津玄師の楽曲で、繊細さと力強さが絶妙に交差するバラードです。優しくも揺れ動くメロディが印象的で、季節の移ろいを感じさせる自然な情景描写とともに、心の内面に迫る感情を静かに紡ぎ出しています。米津の透き通るようなボーカルが楽曲全体を包み込み、聴く者の胸に深い余韻を残す一曲です。
歌詞の世界観は、変わりゆく時の中での不安や期待、そして再生への希望が織り交ぜられており、一瞬の刹那を切り取るような繊細な感性が感じられます。楽曲の柔らかなアレンジと情緒的な表現が融合し、聴く者の感情に静かに寄り添うことで、春の訪れとともに心を動かす独特の温かさを生み出しています。
2. orion
「orion」は、2017年にリリースされた米津玄師の楽曲で、穏やかで透明感のあるメロディが印象的なバラードです。NHK総合アニメ『3月のライオン』第1シリーズのエンディングテーマに起用されました。やわらかなアコースティックサウンドと繊細な歌声が織りなす世界観は、聴く者の心に静かな安らぎをもたらします。夜空に輝く星座の名前を冠したタイトルが示すように、楽曲全体に広がる幻想的で優しい空気感が特徴的です。
楽曲は、人生の中での迷いや孤独、そしてそれを乗り越えようとする希望を静かに描き出しており、聴く人それぞれの心情に寄り添う普遍的なテーマを持っています。
3. WOODEN DOLL
「WOODEN DOLL」は、2014年にリリースされた米津玄師の楽曲で、彼の初期の作品のひとつとして知られています。シンプルながらもどこか不気味さを感じさせるメロディと、不安定で繊細な歌声が特徴で、独特の世界観を作り上げています。曲全体を包み込む静謐な雰囲気と、儚さや孤独感が交錯する感情表現は、聴く者の心に深く響きます。
この楽曲は、まるで動かない木製の人形のように、感情が閉じ込められた状態を象徴しており、内面の葛藤や閉塞感が詩的に描かれています。米津玄師の繊細な表現力と、暗く幻想的なサウンドが融合した「WOODEN DOLL」は、彼の音楽性の幅広さと深さを感じさせる、ファンの間でも特に評価の高い初期作品の一つです。
まとめ
米津玄師は、多彩なジャンルを巧みに融合させる革新的な音楽性と、深い感情を繊細に表現する歌詞で、現代の音楽シーンに確かな存在感を放つアーティストです。彼の楽曲はポップやロック、エレクトロニカなどを自在に行き来しながら、独特の世界観と詩的なメッセージを届け、多くのリスナーの心を掴んでいます。
代表曲「Lemon」「KICK BACK」「ピースサイン」では、失恋や葛藤、希望といった普遍的なテーマが力強く描かれ、幅広い世代から共感を集めています。また、アニメやドラマ、映画とのタイアップを通じてその影響力を拡大し続けている米津玄師の音楽は、これからも多くの人々の感情に寄り添い、新たな表現の可能性を切り拓いていくことでしょう。
