オーケストラの音楽を聴くときに、曲名に「交響曲」や「協奏曲」とついていて、いったいどういう意味なんだろうと思ったことはありませんか?
二つの言葉は似ていますが意味はまったく違います。そこで今回は、交響曲と協奏曲の違いや、それぞれの歴史と名曲をご紹介します。
言葉の意味をしっかり理解してから曲を聴くと今までとは違う聴き方ができて、より深く音楽を楽しめます。音楽史や作曲家についても理解を深められるので、もっといろいろな曲を聴いてみたくなりますよ。
わかりにくい演奏形式の違いも解説するので、知識を深めてさらにクラシック音楽を楽しんでください。
交響曲と協奏曲の違い
交響曲と協奏曲の大きな違いは、交響曲はオーケストラのみで演奏されて、協奏曲はオーケストラとソリスト(独奏楽器)で構成されることです。
どちらもオーケストラの演奏なので、音楽を耳で聴くだけでは違いがわかりにくいかもしれません。
また、交響曲は大規模な編成で、協奏曲はそれに比べると小規模です。交響曲の方が演奏時間が長く、4楽章で構成されるのに対して、協奏曲は3楽章で成り立ちます。
交響曲と協奏曲のそれぞれの特徴について、これから詳しく解説します。
交響曲を徹底解説
交響曲の特徴
交響曲はオーケストラで演奏される、多楽章からなる楽曲のことです。弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器で成り立つ、オーケストラの一番規模が大きい曲です。
交響曲によってもさまざまですが演奏時間も長く、45分ほどです。演奏会の最後のメインとして演奏されることが多いです。
交響曲は4楽章からなるという大きな特徴があります。各楽章でメロディやリズムが異なるので、楽章ごとに曲の雰囲気の違いを楽しめます。
4楽章のうちの1つが「ソナタ形式」をとりますが、第1楽章でソナタ形式が使用されることがほとんどです。
4楽章の一般的なパターンをご紹介します。
- 第1楽章(ソナタ形式の速いテンポ)
- 第2楽章(ゆったりとした穏やかな旋律)
- 第3楽章(メヌエットなどの軽快な音楽)
- 第4楽章(活気に満ちて盛り上がるフィナーレ)
第1楽章のソナタ形式とは、物語のように提示部、展開部、再現部で構成される、曲の流れのパターンです。
初めの提示部では楽曲の主要なメロディが演奏されます。次の展開部では提示部で示されたメロディやリズムが変化し、最後の再現部で再び提示部のメロディが現れる構成です。ソナタ形式で1つの物語になっていることが特徴です。
交響曲はオーケストラで演奏される曲の中でスケールが大きいので、曲中に劇的な展開があったり、さまざまな感情がダイナミックに表現されています。
弦楽器、管楽器、打楽器が勢ぞろいで演奏者の数も多いことから、オーケストラの力強い響きを最大限に活かした曲が演奏されます。
交響曲の歴史
交響曲の形式は、18世紀後半の古典派期に確立されました。交響曲を発展させた作曲家はハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンといわれています。多くの交響曲を残し、4楽章からなる形式を完成させました。
中でもハイドンは「交響曲の父」と呼ばれ、交響曲の形式を確立した作曲家です。作曲した交響曲は100曲を超えていて、これほど多くの数を作曲した人は後にも先にも彼だけです。ハイドンが確立した交響曲というジャンルをさらに発展させたのがモーツァルトです。35歳の生涯でしたが、約40曲もの交響曲を作りました。
その後ベートーヴェンも交響曲を洗練させていき、今でも人々に親しまれている名曲を生み出しました。
古典派以降もブラームス、マーラー、チャイコフスキーなど数多くの作曲家によって壮大な交響曲が作られていて、年代が移り変わっても基本的な楽曲の形式は変わっていません。クラシック音楽の中心的なジャンルとして、交響曲は今も愛されつづけています。
交響曲の名曲3選
ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」
ベートーヴェンの最後の作品で、交響曲の代表作として広く知られています。
ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」
ドヴォルザークの最高傑作です。チェコ出身のドヴォルザークは51歳の時にアメリカの音楽院の院長として働くことになり、新天地アメリカで作曲された曲です。第2楽章の「家路」は聴いたことがある方が多いのではないでしょうか。
チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」
チャイコフスキーの最後の作品で、泣きながら作曲したといわれています。この曲は死についての瞑想だと解釈する人もいます。
協奏曲を徹底解説
協奏曲の特徴
協奏曲とはソリスト(独奏楽器)とオーケストラで演奏される、3楽章からなる楽曲です。協奏曲をイタリア語の「コンチェルト」と言い表す音楽家も多いです。文字通り、ソリストとオーケストラで協力して演奏するので協奏曲と呼ばれます。
ソロで演奏される楽器はピアノ、ヴァイオリン、フルート、ホルン、チェロなどさまざまで、今でも次々に新しい協奏曲が生み出されています。
協奏曲はソロの楽器によって曲の雰囲気が大きく変わります。人気で有名なソリストがオーケストラと共演することが多く、ソリストの個性によっても曲の印象が異なるのがおもしろいですよ。
協奏曲は3楽章で構成されます。オーケストラの演奏会の前半に演奏されることがほとんどで、演奏時間も30分ほどと交響曲に比べると短いです。ソリストを目立たせるためにオーケストラは小編成で、楽器の数が少ないのも特徴です。
交響曲と同じく協奏曲も第1楽章でソナタ形式が使用され、3楽章の中で一番長いです。
協奏曲は、主に次の4つの部分に分けられます。
- ソリストのみで演奏する部分
- オーケストラのみで演奏する部分
- ソリストが主体でオーケストラが寄り添う部分
- オーケストラが主体で演奏する部分
ソリストのみで演奏される部分は、その楽器の音色やソリストの個性ある演奏が楽しめます。高度なテクニックが必要な「カデンツァ」と呼ばれるソリストの技量が発揮される部分は聴きどころです。カデンツァの時の指揮者やオーケストラの演奏者の表情を見るのもおもしろいですよ。
ソリスト主体でオーケストラが寄り添う部分はオーケストラがソリストの伴奏をするので、協奏曲ならではの構成の音楽が楽しめます。
協奏曲の歴史
協奏曲の始まりは18世紀初頭のバロック期です。オーケストラの形成が進み、バロック末期に協奏曲の形式が確立されました。
バッハやヴィヴァルディが協奏曲を確立したといわれていて、チェンバロやヴァイオリンなど、独奏楽器の魅力を存分に引き出す楽曲を生み出しています。
その後も数多くの作曲家によって協奏曲は作られていて、現在でも変わらず親しまれている音楽ジャンルです。
協奏曲の名曲3選
ショパンピアノ協奏曲第1番
切ないメロディで親しまれている、ショパンが20歳の時の作品です。当時片思いしていた女性への想いが反映されているといわれています。
チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲ニ長調
当時は評判がわるかったといわれる曲ですが、今では名曲として名高い人気曲になっています。
ラフマニノフピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフの作曲活動の最高峰といわれる曲です。この曲によって彼の名が世界中で知れ渡るようになりました。
クラシック音楽の演奏形式の違い
交響曲と協奏曲以外にも、わかりにくいクラシック用語があります。ここからはクラシック音楽の演奏形式の違いを解説します。
管弦楽
管弦楽とは、弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器で構成されるオーケストラのことです。オーケストラで演奏される楽曲を管弦楽と呼ぶこともあります。
交響曲と協奏曲も管弦楽の一種です。
室内楽
室内楽とは管弦楽で使われる楽器を用いて演奏される小編成の合奏です。大規模なオーケストラとは違って演奏者が少ないので、室内楽のコンサートは広くない会場で開催されることが多いです。演奏者の人数はさまざまですが、多くても20名ほどまでの編成です。
楽器の音色が際立ってよく聴こえることから、それぞれの楽器の音の良さをじっくり楽しめます。
弦楽四重奏、ピアノ三重奏など種類はいくつもありますが、基本的な楽器の組み合わせを4つご紹介します。
- 弦楽四重奏:ヴァイオリン3本、ヴィオラ1本、チェロ1本
- 木管五重奏:フルート、オーボエ、ファゴット、クラリネット、ホルン各1本
- ピアノ五重奏:弦楽四重奏+ピアノ1台
- 金管五重奏:トランペット2本、ホルン、トロンボーン、チューバ
吹奏楽
吹奏楽は木管楽器、金管楽器、打楽器で編成されます。部活動で吹奏楽部がある学校も多いのでイメージしやすいかもしれないですね。オーケストラの楽器の中の、弦楽器以外のもので演奏されます。
吹奏楽ではクラシックやポップス、ジャズなど幅広いジャンルの音楽を演奏して楽しませてくれます。
まとめ
交響曲と協奏曲はオーケストラで演奏されることは同じですが、細かくみていくと全く違うことがわかりました。
音楽の授業で習った偉大な作曲家たちは、交響曲や協奏曲の発展に大きく貢献したんですね。
「この楽器の魅力をさらに知りたい!」という時はその楽器がソロで活躍する協奏曲を聴いてみてください。私はホルンの音色が好きなのでホルン協奏曲を生で聴いてみたいです。
オーケストラとは違う演奏形態の室内楽や吹奏楽などもそれぞれ魅力があるので、お近くで演奏会があればぜひ足を運んでみてください。
【この記事を書いた人】
オーケストラ好きライター さち
「愛知県在住のWebライター。学生時代は吹奏楽部に所属し、7年間ホルンを演奏していました。現在、双子を育児中です。 心が洗われて優雅な気持ちになる、オーケストラの音楽の魅力を伝えたいです。」
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