華やかな明るい音色で曲全体をリードしていくトランペット。幅広いジャンルの音楽で主役となる、金管楽器の花形です。
そんなトランペットの音を聴いたことがある方は多いと思いますが、楽器の歴史や特徴についてご存じですか?
今回はトランペットの歴史や特徴を詳しく解説し、仲間の楽器もご紹介していきます。
トランペットの歴史
トランペットは数千年にわたる長い歴史をもっています。楽器の役割や形状を大きく変化させながら時を重ねてきました。
それではトランペットの歴史を振り返ってみます。
古代から中世
トランペットは世界最古の楽器の一つです。現代の曲でもよく使われる楽器なので歴史が浅いと思われがちですが、実はとても長い歴史をもっています。
約3,000年前の初期のトランペットは、宗教の儀式で使われたり、軍隊や競技の合図や信号の音として用いられる楽器でした。
当時は唇を振動させて音を出すだけのつくりだったので、同じ金管楽器のホルンやトロンボーンと始まりは同じともいえます。長い歴史の中で進化し続け、いろいろな金管楽器が誕生していったのですね。
今のように音程を変えられる仕組みはなく、長い1本の筒の先が広がっているシンプルな楽器だったので、唇の動きや息の速さを調整して音を変えていたといわれています。
古代のトランペットは金属以外の素材も使われていて、木、竹、樹皮、粘土、人骨などさまざまでした。
中世の14世紀頃に入ると管のすべてが金属でつくられたものが誕生し、トランペットは徐々に音楽の演奏用として使用されるようになります。しかしこの時期も限られた音域しか出すことができませんでした。
バロック期
17世紀頃にトランペットは音楽界で重要な地位を占めるようになり、王室の儀式や宗教音楽、オペラなどで使用されるようになりました。
しかし楽器としての機能はまだまだ完璧とはいえません。
当時のトランペットは「ナチュラルトランペット」と呼ばれるバルブのないデザインだったため、演奏者は唇だけで音程を操る高度な演奏技術が求められました。
管の長さの異なるあらゆる調のトランペットがつくられるようになり、ハ長調ならC管の楽器、ト長調ならG管の楽器など、調性のちがう楽器をいくつも用意して持ち替えて吹くこともあったそうです。トランペットをいくつも持ち運ぶのは大変だったでしょうね。
バルブが発明された19世紀
19世紀に入り、トランペットの設計に革命が起こります。
ナチュラルトランペットの不便さから手軽に管の長さを変えられないかと考えられ、1815年頃に発明されたのがバルブです。
ピストンを指で押すとバルブが動いて息の通り道が切り替わるようになったので、演奏しながら管の長さが変えられるようになりました。
これにより半音階の演奏が可能になり、トランペットの音楽的可能性も大きく広がりました。
20世紀から現代
20世紀に入るとさらにトランペットの活躍の場は広がり、特にジャズ音楽において重要な役割を果たすようになります。
「キング・オブ・ジャズ」と讃えられたルイ・アームストロングは高い音色を長時間キープするなど優れた演奏技術を披露し、トランペットの演奏法や音楽性を新たな高みに引き上げました。
ジャズトランペット奏者のマイルス・デイビスも、ジャズの新しい演奏スタイルを開拓し続けました。
現在ではトランペットはジャズ以外にもオーケストラや吹奏楽の一員として、なくてはならない金管楽器です。
今のトランペットは大きく分けて「ピストンバルブ式」と「ロータリーバルブ式」の2種類があります。音域や運指はどちらも同じですが、ロータリートランペットは楽器を横に寝かせて構えるタイプです。
ピストントランペットが明るく華やかな音色なのに対して、ロータリートランペットはやわらかい響きをしているのが特徴。ドイツやオーストリアなどで活躍した作曲家の作品ではロータリー式のものが使われることが多いですが、吹奏楽ではピストン式が一般的です。
トランペットの特徴
音色
金管楽器の花形であるトランペットは、華やかで輝かしい音色が魅力です。
私もその音色が大好きで、曲が盛り上がる場面でトランペットの明るくパワフルな音色が聴こえると一気に気持ちが高まります。
パーンと明るい金管楽器らしい音も得意ですが、ときにはやわらかい響きで穏やかなフレーズを担当することもあり、さまざまな音色で私たちを楽しませてくれます。
存在感抜群のトランペットなので、ミスをすると目立つともいわれます。ソロパートやメロディラインを担当することが多い楽器なので、目立つ場面でも自信を持って演奏できる人が向いているかもしれません。
音の出し方
トランペットの音の出る仕組みは、「マウスピース」と呼ばれる円錐の形をしたパーツを使って唇を振動させ、その振動がマウスピースと管の中を通り楽器の音が鳴ります。
初めて楽器を吹くときは、まずはマウスピースだけで音が出せるように練習して、音が出るようになったらマウスピースを楽器に取り付けて吹いてみます。
金管楽器の音の出し方はすべて同じ仕組みで、上下の唇の締め具合によって音程を変えることができます。
唇が楽器の一部になるので唇が荒れてしまうと思うように音が出せません。私も吹奏楽部だったとき、唇が荒れてしまって痛くてホルンが吹けないことがありました。
金管楽器奏者はそうならないようにリップクリームを塗るなど、唇のケアを念入りにおこなっています。
トランペットの仲間
ピッコロトランペット
大きさはトランペットより小さく、音域は1オクターブ高い音が出る楽器です。
指で押さえるピストンは4つのものが主流。
トランペットが吹けるならピッコロトランペットも吹けるというわけではなく、上達するのに時間がかかるむずかしい楽器といわれています。
コルネット
見た目はトランペットによく似ていますが、少し小さめで丸みを帯びた形をしています。
オーケストラではトランペット奏者が持ち替えて演奏します。
やわらかく色っぽい音を出すことができるのが特徴。なめらかな動きも得意なので、速いパートを演奏することもあります。
コンパクトで持ちやすく、音が出しやすいということもあって、小学校の金管バンドでも親しまれている楽器です。
フリューゲルホルン
ホルンという名前がついていますがトランペットの仲間です。
トランペットと同じ音域を担当し、音色はやわらかくて太く、深い響きのする楽器です。
ジャズのトランペット奏者がバラード曲で持ち替えて演奏することもあります。
バストランペット
バストランペットは通常のトランペットよりもマウスピースが大きく、管長も長くてサイズが大きい楽器です。
音域はトロンボーンに近いくらいの低い音が出るので、トロンボーン奏者やユーフォニアム奏者が持ち替えて演奏することがあります。
トランペットの魅力
トランペットのまっすぐで華やかな音色は聴く人の気持ちを明るくしてくれます。
楽曲の中でリードメロディやソロパートを担当することが多いので、演奏者が目立ちやすいということも金管楽器の花形といわれる理由ですね。
曲の盛り上がりの決め手にもなるため、お客さんの心を掴んだり、曲にメリハリをつけることが得意です。
トランペットが活躍する音楽ジャンルもさまざまです。
- オーケストラ
- ジャズ
- 吹奏楽
- マーチング
- 演歌
- ポップス
など、ジャンルを超えて親しまれている金管楽器がトランペット。
曲の雰囲気によってまったくちがう一面を見せてくれるのがおもしろいですね。
トランペットを持って移動したいときに、持ち運びしやすいサイズということも魅力の一つです。
木管楽器のフルートやクラリネットほど小さくはないですが、大きすぎないサイズなので練習場所の移動もしやすいです。
最後に、トランペットが大活躍する1曲をご紹介します。
華やかな音色でリズミカルに音楽を奏でるトランペット。これほど軽やかに演奏するには高い演奏技術が必要です。
私はこの曲を聴くと小学校の運動会を思い出します。
まとめ
トランペットはさまざまなジャンルの音楽に必要とされるので活躍する場が多い楽器ですね。
吹いている姿がかっこよく映ることや、メロディを演奏して目立つということもあり、吹奏楽でも人気の楽器です。
私が小学生の時の金管バンドにはトランペットのほかにコルネットやフリューゲルホルンもあって、演奏していた友達のことを思い出して懐かしくなりました。
これからオーケストラや吹奏楽、ジャズの演奏を聴かれる際は、トランペットがどんな音色を奏でているかや、仲間の楽器に持ち替えているかなどに注目してお楽しみください。
最後になりますが、自衛隊・アメリカ空軍音楽隊チャンネルさん、素晴らしい演奏を記事に引用させていただきありがとうございました。
【この記事を書いた人】
オーケストラ好きライター さち
「愛知県在住のWebライター。学生時代は吹奏楽部に所属し、7年間ホルンを演奏していました。現在、双子を育児中です。 心が洗われて優雅な気持ちになる、オーケストラの音楽の魅力を伝えたいです。」
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